カナダ在住研究者のつぶやき

バンクーバー在住の研究者が、個人的に関心の高いエネルギー・環境問題や、趣味のトレイル・食べ歩き・酒についてつぶやく予定

2021年はBC州におけるOld-growth trees伐採のターニングポイントになる!?

 

CBCで森林に関する「興味深いニュース」があったので、共有します。

絶滅の危機に瀕しているエコシステム(生態系)と林業が共存するために、変化が不可欠だと専門家が喚起している記事。

 

なお、本文に入る前に、本記事のキーワードであるOld growth treesを「原生林」と訳していますが、後述のOGSRレポートによる定義だと、一般的には優先樹種の樹齢(海岸沿いで250歳、内陸部で140歳)や、時には物理的特性や生態学的機能に基づいているが、単一の明確な定義はない。BC州のAn Old Growth Strategy for BCによると、「Old-growth treesは、老若樹とそれに関連する植物、動物及び生態学的に繋がるものであり、人間活動の影響を受けていない森林」とされています。従って、高齢樹林より原生林の方が適しているかと思い、訳しています。

 

 

〜以下記事の一部翻訳〜

Kwakiutl(クワキウトル)先住民のKnox David Mungo氏にとって、Vancouver島の北東海岸沖の森林と海は神聖なものである。彼は、先住民コミュニティのために魚を集め、曽祖父のトーテムポールを復元してきた。

「現在、活発な伐採が行われており、十分育った樹木が伐採され、大量の廃棄物が残されている。山腹の道路に放置すると、土壌の浸食を起こし、サケが生息する川に地滑りを誘発している。」

 

Vancouverを拠点とする大手製材会社であるWestern Forest Productsは、Knox氏の領地内のいくつかの地域で樹木を伐採しており、事業の環境への影響を最小限に抑えるための方針を定めている。

BC州の原生林が伐採されないようにするため伐採道路を封鎖している、バンクーバー島の南海岸沿いの保護活動家は、生物多様性を保護するために州からの更なる取り組みを望んでいる。生計を林業に依存しているコミュニティも、彼らが知っているように、新しいルールが人生を終わらせないという保証を望んでいる。

 

2020年9月、BC州政府が「A New Future for Old Forests」というタイトルのOld Growth Strategic Review (OGSR)をリリースした。州が森林管理政策を変更して、絶滅の危機に瀕している古代からの生態系をより上手く保護し、持続可能な長期的な林業を支援することを目的とした、野心的な一連の推奨事項が示されている。

 

OGSRが提案する最初のステップは、先住民をより意味のある方法で意思決定プロセスに参加させることにより、先住民と政府間の関係を確立することである。

これは、クワキウトル族の首長であるRoss Hunt氏が何年も望んでいたことである。彼は、州が先住民コミュニティを更に受け入れるまで、先住民にとって文化的な重要性と経済的価値のある原生林の伐採を停止することを望んでいる。Hunt氏によると、数千万ドルの丸太が彼らの伝統的な領土からトラックで運ばれ、そこに住む先住民の人々にはほとんど全く利益がないのを見てきた、と主張している。

 

OGSRの共同著者の1人であり、Tahltan族のメンバーであるGarry Merkel氏は、森林管理者であるAl Gorley氏と一緒に作成したレポートに大きな期待を寄せている。しかし、その14の推奨事項を迅速または簡単に達成することはできないことを認めている。「私たちは別のタイプの管理スタイルに移行する必要があります。生物多様性リスクの管理と、より大規模な生態系の健全性の維持に焦点を当てたものです。」と述べている。

 

報告書は、重要な原生林のある地域への伐採を延期するために直ちに行動を起こすよう求めた。Sierra Club BCによると、BC州の海岸沿いと内陸部で、毎年140,000 haの原生林(樹齢120年以上の木がある森林)が伐採されていると推定している。

 

BC州が昨年9月にOGSRをリリースしたとき、353,000ヘクタールの森林の保護を発表した。Merkel氏は、政府がさらに前進することを望んでいると述べた。

 

 

Vancouver島のPort McNeill市長であるGaby Wickstrom氏は、OGSRが原生林の伐採の全面禁止を求めていないことは安心だと述べた。これは彼女の地域の主要な経済的推進力の1つであると彼女は言う。切り株から生み出された収入は、社会プログラム、学校、病院のような医療サービスに支払われると彼女は言った。Gaby Wickstrom氏は業界の変化に反対していないが、彼らが自分のコミュニティに困難をもたらさないようにしたいと考えている。

 

Gaby Wickstrom氏は、Truck Loggers協会の事務局長であるBob Brash氏とともに、森林管理体制の変化が労働者とその家族にどのように影響するかについて十分な注意が払われていないことを懸念している。

 

Brash氏によると、BC州の伐採業者はすでに厳しい規制に直面しており、競争力に影響を及ぼしているという。「私たちの多くは、私たちが厳しく規制されており、私たちが扱う規則はかなり面倒で強烈だと今言っているでしょう」とBrush氏は述べている。

 

BC州が国際的な木材輸出国として競争力を維持するためには、政府は2021年に原生林の伐採に関する新しい政策を、あまり早くは実施すべきではないとBrash氏は述べた。

「BC州の森林部門への投資環境は良くありません。土地基盤には不確実性があります。」

 

Brash氏とWickstrom氏はどちらも、伐採業界が過去100年間に何度も自らを改革しなければならなかったことに同意している。しかし、適切な調整があれば、州の主要な経済的推進力であった伐採産業は引き続き力強いと彼らは信じている。

 

森林部門は、BC州の総輸出の4分の1以上を占めています。2019年には119億ドルをもたらし、50,000人以上のBC州民を雇用している。

Wickstrom氏によると、2018年には、彼女の地域で伐採された木材に対して、6000万ドルの切り株料金が州に支払われたという。

 

 

冒頭のDavid Mungo氏は、2021年が、BC州の林業の未来のターニングポイントを示すために、すべての利害関係者がより有意義な方法で集まる年になることを望んでいる。

 

 

以前の記事(カナダ・BC州の森林・樹木に関する興味深い5つのこと)でも紹介した通り、BC州は森林が重要な産業の一つです。

同時に、先住民との繋がりを重視し、先住民の権利を配慮した政策を積極的に取り組んでいます。記事の途中で引用したA new future for old forestsのOGSRも、高齢の樹木の定義、賦存量、それらの価値、経済的利益、生物多様性への影響、カーボンバランスと気候変動への影響、森林保護の歴史や、先住民との歴史など、幅広い観点から全72ページに渡って纏められており、大変興味深い内容で勉強になります。

 

カナダ、特にBC州は、持続可能な森林管理・経営に積極的に取り組んでおり、世界をリードしています。この問題に対し、BC州、カナダ政府、森林部門の方、先住民の方々がどのように取り組み、協働して、どのような解決策を導き出すのか、要注目ですね。

 

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2020年のバイオ燃料に関するニュースまとめ!Top 20 of 2020 BiofuelsDigest

 

明けましておめでとうございます。

昨年は途中から更新が完全に止まってしまいました。

昨年途中に日本に帰国したため、今後はカナダ関連の最新情報を記すことは出来ませんが、今後も個人的に気になるエネルギー・環境関連のニュースをまとめるなど、定期的に更新できるよう努めようと思います。

 

早速、昨年度も取り上げた、Biofuel Digest誌の記事で、2020年のバイオ燃料に関するニュース Top 20 of 2020が興味深かったので、共有します。

 

 

#1 Biofuels Mandates Around the World 2020

世界中(65の国:EU 27カ国、アメリカ大陸 14カ国、アジア太平洋 12カ国、アフリカ・インド洋 11カ国、EU非加盟ヨーロッパ 4カ国)のバイオ燃料の規制と目標の総説記事。9月に改訂版の記事が投稿されています。日本は含まれませんが、大国から小さな国・地域まで、様々な国と地域のバイオ燃料の最新動向を簡単に知ることが出来ます。

 

#2 The Best Places to Work 2020

読者投票で決められた働きたい場所・企業。先進バイオ燃料(従来の薪や焚き火以外のバイオマス燃料)に関わるあらゆる組織が対象で、生産者・研究機関・研究所・供給者・投資者などが、297箇所が投票されました(アカデミックや教育機関は対象外)。

ちなみに5位がPOET、4位がFluid Quip Technologies、3位がLanzaTech、2位がICM、1位がPraj Industriesでした。

 

#3 The NEXT 50 Companies to Disrupt the World* (*in a really great way) for 2020

既存のオールドエコノミーからバイオエコノミーを基盤とした急速な革新や自然、再生可能資源の持続可能な利用への転換を促進し、従来のマーケットを破壊す科学技術を持つNEXT 50の企業が紹介されています。

最新のバイオエコノミーは多様化しており、燃料、ケミカルス、食料品、新規作物、動物飼料などの企業が選ばれています。具体的には、材料系17社、作物開発やAgtech*が7社、食料品や飼料が9社、燃料&ケミカルスが11社、バイオロジーが11社、選ばれています。

* Agtech:AIなどを活用し、収量、効率、収益性の向上を目的とした農業、園芸関連の農業分野におけるテクノロジー。

 

#4 50 Hottest Companies in the Advanced Bioeconomy for 2020

年に一度アメリカで開催されるAdvanced Bioeconomy Leadership Conference (ABLC)で表彰されたバイオエコノミー関連の50の企業が紹介されています。2008年以降毎年表彰されているのですが、従来はアメリカの企業が大半だったのに対し、今年はアメリカ以外の企業がほぼ半数選ばれているのが特徴です。

 

#5 Super clear, super thin, super durable: Zymergen bends it like Beckham, electronics-wise

アメリカ・Zymergen社が開発した新規材料”Hyaline”に関する記事。エレクトロニクス分野への応用に向けた極薄フィルムで、フレキシブル回路や、ディスプレイタッチセンサー、印刷可能なエレクトロニクス等で既に使用されています。微生物を用いた発酵で生産した原料のみを利用しており、持続可能な社会の実現に向けて革新的な技術と期待されています。透明で薄くて耐久性の高いフィルムが、非化石資源から創製できるのは素晴らしいですね。

 

#6 From Food to Fuel – White Dog Labs converts ethanol plant to alternative protein production

エタノール産業およびトウモロコシ農家はCOVID-19以前から、干ばつや洪水等の天災や、原油価格の高騰、中国との貿易問題などに悩まされていた。同時に、アメリカ内では、精肉工場の閉鎖が相次いでおり、肉などのタンパク質源が不足している。

そのような中、DelawareのWhite Dog Labs社が、エタノールプラントをタンパク質の大量生産プラントにRe-purposeする計画を発表しました。北米ではBeyond Meatという代替肉(また記事にしたいと思います)が普通にスーパーでも売っているほど、代替肉等のビジネスが注目されています。第六位に選ばれるほど注目を集めているのですね。

 

#7 Will I get sick, will I die? Surprises in the COVID-19 hard data on infections, mortality, as the April 6th witching hour nears

5月に投稿されたCOVID-19に関する記事で、バイオ燃料とは全く関係のない記事です。今年を象徴する記事ですね。

 

#8 Phillips 66 to build world’s largest renewable diesel, sustainable aviation fuel plant

TexasでPhillips 66社が世界最大の再生可能ディーゼル工場を建設することを発表したニュースがランクイン。何と年間80億ガロン(300億リットル)のディーゼルが生産可能なプラントで、2024年には操業開始の予定。原料は食用油やグリース、大豆油を用いる再生可能エネルギーである。

 

#9 The Hand Sanitizer Market: a salvation for beleaguered ethanol producers, or not?

3月に投稿された記事。バイオエタノールはアメリカで最も普及しているバイオ燃料の一つだが、コロナ禍で輸送用燃料の需要が減少し、価格が低下。一方で、消毒用アルコールの需要が急速に高まり、在庫が不足していた。通常、アルコール類は酒税対象で、工業用アルコールや消毒用アルコールなどは詳細に分類されており、決められた用途以外での販売は禁止されているが、このパンデミックに対し、the Alcohol and Tabacco Tax and Trade Bureau (TTB)は、一部のアルコール燃料業者に対し、消毒用アルコールとしての販売を許可した。その結果。Amentis, Inc.はModesto近郊で年間6,500万ガロン規模のエタノールプラントで消毒用アルコールとしての販売を発表した。

ちなみに日本でも酒造メーカーが消毒用アルコールを販売していましたね。

 

#10 Renewable diesel expanding with petroleum-to-renewable refinery conversions

再生可能ディーゼルはまだ新しい技術だと思っていませんか?2010年に初めての商業用の再生可能ディーゼルの製造施設が操業開始して以来、既存の石油リファイナリーから再生可能ディーゼルへの大きな転換が進んでいる。2010年には78MMGY だったのが2018年には397MMGYに到達し、Fuels Instituteの最新のレポートでは2022年までに3,000MMGYに成長する見込みを予測している。本記事では、なぜ再生可能ディーゼルがここまで急速に成長してきたか、についてまとめている。個人的に興味深い記事なので後日まとめたいです。

 

#11 MEGaproject: UPM and its $600M gambit in renewable chemicals

フィンランドのUPM社が、ドイツ・Leunaで取り組まれている、固形木材からモノエチレングリコール、リグニンベースの再生可能な機能性フィラー、モノプロピレングリコール、産業用糖類を生成するバイオリファイナリー研究に6億ドルの投資を行なったというニュース。現状の年間キャパシティは22万トンで、2022年末には操業開始予定。木材の分解には超臨界流体技術を採用。

 

#12 Gevo’s historic $900 million offtake deal with Trafigura Group

コロラドのGevo社が、Trafigura Groupと再生可能ハイドロカーボンの9億ドルの長期供給契約に合意したニュース。本契約では、Trafigura社は2500万ガロンの再生可能ハイドロカーボンの輸送が盛り込まれており、2023年に開始する再生可能な航空用燃料の一部として低炭素プレミアムガソリンに用いられることが期待されている。

 

#13 Anellotech’s technology converts Lay’s potato chip bag into key chemical required for plastic bottles

日本ではカルビーのポテトチップスが最も有名ですが、北米ではLaysのチップスがリーディングカンパニーで、スーパーでもよく見かけます。本記事は、ニューヨークのAnellotech社が、このLays社のポテトチップスの袋から有用な化学物質に変換する技術(Plas-TCat program)を開発したニュース。具体的には、飲料用ペットボトルの原料に用いられるp-キシレンに加え、ベンゼンやトルエン、オレフィンに変換できる。実は技術・発想自体は特別目新しいものではないが、身の回りのゴミが宝物に化けるのはインパクトがあって面白いですね。

 

#14 The largest sustainable aviation fuel offtake deal, ever?: Delta strikes historic SAF contract with Pacific Northwest biofuels venture

大手航空会社のDelta社がベンチャー企業であるNorthwest Advanced Bio-Fuelsと再生可能な航空用燃料の供給契約に合意したニュース。その契約内容は規模が大きく、200万ドルの初期投資に加え、さらにGevo社と怪物級の契約が予定されている(一応非公式)。

 

#15 Enerkem, Shell, Suncor, Proman’s new $669 million biofuels baby

カナダ・ケベック州にて、タイトルの4社がケベック州及びカナダ政府の協力のもと、7億ドルのバイオ燃料製造プラントを建設する、というニュース。本プロジェクトでは、20万トンの非再生可能廃棄物や木材廃棄物を1.25億トンのバイオ燃料に変換し、同時に世界最大級の再生可能水素及び酸素の生成施設も含まれる。

 

#16 Inside GranBio, NextChem’s new partnership to “blow out” cellulosic ethanol global roll-out

ブラジルのGranBio社とイタリアのNextChems社が第二世代バイオエタノール*の製造に向けて戦略的提携を結んだニュース。GranBio社はバイオエタノール製造技術に取り組んでおり、2.2億ドルを投資して南半球で初めてのセルロース系エタノールの生産プラントを操業している。現在、毎年3千万トンの第二世代エタノールを生産している。NextChems社が持つエンジニアリングインテリジェンスやグローバル力を生かし、第二世代エタノールのグローバルな商業化を目指している。

* 第二世代バイオエタノール:デンプンや糖蜜を原料とした従来のバイオエタノールと異なり、樹木や草本などのバイオマス資源を原料とし、セルロースやヘミセルロースといった多糖類成分を基質としたバイオエタノール。

 

#17 Fulcrum fires back in Abengoa controversy

CaliforniaのFulcrum社がNevada, Reno近郊で取り組んでいるSierra Biofuels projectにおいて、1億ドルのコスト超過等の問題を抱えていることを報告した記事。

 

#18 U.S. Department of Energy announces $27M in plastics R&D, LanzaTech, Algenesis, BASF, Pepsi, Stora Enso, ADM, AltAir included

アメリカ・エネルギー省が、プラスチックの再利用や新たなバイオベースプラスチック等の研究開発に2700万ドルを投資するニュース。例えば、藻類由来の生分解性ポリウレタンや、バイオベースの熱可塑性ポリウレタン、再利用不可な廃プラスチックの有用モノマーへの変換や、再生可能なバイオマス由来ポリエステルなどが挙げられる。本記事では、採択されている12のプロジェクトに関して、細かに開設されているので、興味のある方はどうぞ。

 

#19 What impact do Low Carbon Fuel Standards have on fuel prices?

Low Carbon Fuel Standardsが燃料価格にどのような影響があったのか、に関して具体的なデータを用いて論じられている記事。ちなみに、Low Carbon Fuel Standardsはガソリンやディーゼルなどの既存の化石資源由来燃料と比較して、炭素排出量を削減するために制定されたStandardです。特にTop downとBottom upの二つに視点から比較検討されています。Top downは全世界で初めに導入されたCaliforniaとアメリカ全体の10年間の数値を比較しており、ガソリン・ディーゼルともに価格には大きな影響がない、と結論付けられている。Bottom upでは、アメリカ海軍のGreat Green Fleet missionに応用した例から論じられている。このGreat Green Fleetは、アメリカ海軍が、従来のディーゼル燃料とバイオ燃料の組み合わせを50%で使用することを2009年に開始した政策。燃料価格への影響について漠然と不安を掻き立てるマスコミが多い中、具体的な数値を提示して論じている記事なので、ぜひ詳細はご確認ください。

 

#20 Exxon inks 525 million gallon, 5-year renewable diesel offtake deal with Global Clean Energy Holdings

テキサスにて、ExxonMobil社がGlobal Clean Energy Holdings社と年間1.05億ガロンの再生可能ディーゼルを五年間購入することに合意したニュース。食料穀物と競合しない休閑地の作物(カメリナ:アブラナ科の一種)を原料として利用している。

 

今年はやはりCOVID-19関連のニュースが目立っていましたね。再生可能ディーゼル関連のニュースが多くランクインしており、関心の高さが伺えます。

今年はCOVIDの影響で、テレワークの普及など生活様式が大きく変容しました。EUを含む欧米諸国では、この機会を利用し、脱炭素に向けた気候変動対策を考慮し、同時に生態系や生物多様性の保全を通して災害や感染症などにもレジリエントな社会モデルへ移行しようとする「Green Recovery」の考え方が提唱されています。

コロナ禍で一時的にエネルギー消費量の増加が鈍化すると予想されるものの、依然エネルギー問題は重要な人類の課題であり、今後もバイオ燃料を初めとした再生可能エネルギー分野は注目度の高いフィールドですね。

 

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【憩いの空間】Van Dusen植物園

 

日本から友人や親戚が来た時、いつも連れて行く場所があります。

その中の一つが、Van Dusen植物園です。

 

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園内には約7500種類の植物があるそうで、様々な木や草花が楽しめます。(冬はあまり種類がないので、おすすめしませんが。。)

季節によって入園時間が異なります(例えば夏は夜8時まで営業していますが、11月から2月は夕方3時には閉園します。)。もちろん入園料も夏は大人$11.5なのが、冬は$8.2になります。

詳しくは植物園のホームページをご覧ください。

 

園内は、中央に広がる芝生エリアを中心に、遊歩道が作られており、一周すると大体一時間程度で回れます。しっかり整備されており、そんなに広くもないので、お年寄りの方でも十分楽しめるかと思います。

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園内にはリスやアヒルなど動物も結構歩いています。ちなみにバンクーバーでは街中にリスがいて、日本の鳩くらい頻繁に見かけます。園内では黒いリスも見かけました。

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この植物園の最大の売りは、五月頃に見頃を迎えるキバナフジ(Laburnum)です。名前の通り、鮮やかな黄色の花で、キバナフジで出来た花の通路(Laburnum walk)はインスタ映えスポットです。

 

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中央の芝生エリアも気持ちいいおすすめエリアです。日本では考えられないほどの高さの木々、圧倒されます。芝生もしっかり管理されており、青々として美しいです。たまにイベントも開催されており、前回行った時はクラシックカーフェスティバル(正式名称は忘れましたが)があり、百人以上のクラシックカー愛好家が自慢の愛車を展示するショーがありました。

 

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他にも、迷路や養蜂場、滝、日本庭園ゾーンなど、見所満載なので、バンクーバーに来た際はぜひ訪れてみてください!

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vandusengarden.org

 

【気分爽快】バンクーバーに来たらトレイルに行こう!〜その5〜 Lynn Creek

 

今回はこちらのトレイルコースを紹介したいと思います。

場所はやはりNorth Vancouver、Lynn Creekです。

 

〜以前紹介したトレイルコースもどうぞ〜

その1:West knob編

その2:Joffre Lakes編

その3:Norvan Falls編

その4:Pacific Spirit Regional Park編

 

 

アップダウンも少なく歩きやすいので、初心者にもおすすめです。

こちらのトレイルコースも以前紹介した本に載っていたコースなので、

本に詳細が載っています。

入り口はリンマウス・パーク。公共交通機関で行けます。

 

goo.gl

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トレイルコースの情報(片道)は、

  Distance: 7 km

  Time: 2 hours

  Elevation gain: 340 m

で比較的平坦な道になっています。ちなみに、私が行った日は、少し遅めに出発したのもあり、帰りはバス停も近かったので片道だけで帰りました。

 

このトレイルも様々な種類のきのこが見られます。

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可愛いきのこ等を見ながらゆっくり歩いていると、

一時間半ほどでTwin Fall bridgeに到着します。

 

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下には滝も流れていて、最高の景色。

おにぎりを食べるようなスペースはありませんでしたが、壮大な景色に心がやすらぎます。

さらにしばらく歩くと、Suspension bridgeがあります。

結構揺れるので面白いですよ!

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さらに進むこと20分ほどで、Thirty food poolに到着します。

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個人的にこのトレイルで一番好きな場所です。

ゆっくり腰掛ける場所もあり、静かな湖面を眺めながら妻とゆっくり話し、トレイルの疲れを癒す。

 

少しずつですが暖かくなってきましたね。バンクーバー・ダウンタウンから近く、手軽に歩ける距離ですし、ちょっとした運動がてら足を運んでみてはいかがですか。

 

 

【ただの棒!?】羽根のない風力発電

 

化石資源の枯渇や、気候変動問題といった喫緊の課題に対し、二酸化炭素排出量の削減が求められる中、再生可能エネルギーへの期待が益々高まっています。

昔に比べてかなりヨーロッパや北米では、再生可能エネルギーが占める割合が急速に増加しています。以前記事(【グリーン都市・バンクーバー】2050年までに再エネ100%)にしましたが、バンクーバーは2050年までに100%のエネルギーを再生可能エネルギー由来にすることを2015年に宣言しており、更には世界有数の工業国であるドイツでも、2050年までに消費電力の80%を再生可能エネルギーで賄うという非常にチャレンジングで先駆的な取り組みを行っています。

 

さて、再生可能エネルギーといえば、どんなエネルギーを想像するでしょうか。

太陽光、風力、バイオマス、潮力、地熱など様々な形態がありますね。

 

カナダの場合は、豊富な水資源を生かした水力電力が発電電力源の大部分を占めております。日本の場合も、再生可能エネルギーの中では水力の割合が比較的高く、続いてFIT(固定価格買取制度)の導入によって急速に広まった太陽光発電が普及しています。最近ではソーラーパネルを見かけることも珍しくなくなりましたね。

一方、再生可能エネルギーの先進国、ドイツでは風力発電の割合が急増しており、特に風力が強く、場所も豊富に存在する洋上での風力発電の普及に政府が取り組んでいます。

 

今回の記事で紹介したいのは、その風力発電。といっても、丘の上でよく見かける風車ではなく、羽根のない風力発電!

スペインのVortex Bladeless社によって開発されたこの風力発電、とても面白いですね。

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(写真はVortex社のホームページより引用)

従来の風力発電と発電システムが大きく異なり、垂直で細長い円筒の中には、新規の発電システムが搭載されており、上部の振動をエネルギーに変換する仕組み。

風力発電と表現しますが、従来の風力発電では達成が困難であった、家庭用などの小型の風力発電システムとしての普及を目指しているようですね。

 

今年度中には商品化に向けて動いているとのことで、従来の風力発電の課題であった、メンテナンス、償却、騒音、鳥や環境への影響といった問題を解決できる新たな形の再生可能エネルギーとして、大いに期待できますね。

 

本紹介 森林異変ー日本の林業に未来はあるか(田中淳夫著)

 

カナダにいると森林管理システムが整備されており、日本のような未整備で廃れた森林を見ることはほとんどありません。そこで、日本の林業システムの現状について知りたくなって、田中淳夫先生の「森林異変:日本の林業に未来はあるか」という本を読みました。

森林異変-日本の林業に未来はあるか (平凡社新書) (日本語) 新書

 

本著を読む前の私の漠然とした林業に関するイメージは:

戦争時に木材需要が高まり、大量伐採し、成長効率の高いスギ・ヒノキ材の人工林を全国各地に植林した。戦後復興を迎え、外材の輸入を始めた途端、価格競争に負けてしまい、国内材では産業が回らなくなり、林業を廃業する人も続出し、結果的に日本の林業システムが崩壊、手入れされていない荒れた森林が日本各地に出来上がってしまった。。。

という理解でした。大枠は間違っていないかと思いますが、本著を読んだ後、国産材の消費量がやや増加傾向がある、森林組合をはじめとした日本林業のシステムとしての問題など、勘違いしていた部分や知らなかった問題も多く、かなり勉強になりました。

 

 

まず、第一に驚いたのが、木材自給率(国産材の割合)が21世紀に入ってから増加していること。てっきり自給率は低下し続けているものかと思いきや、2000年に18.2%まで低下した自給率も、2008年時点で24%、昨年のデータで見てみると、なんと36.6%まで増加しています。その背景には、中国等の木材使用量増加に伴う外材の価格上昇だけでなく、日本林業界の努力があります。(正確には、それまで他のサービス業界では当然の商売努力がなされていなかったのですね)。

 

そもそも国産材の割合が減少した理由について。常套句のように言われる理由が、「安い外材に押されて」の言い訳。つまり、海外から安い木材が輸入されているために、価格の高い国産材は売れなくなった。この国産材が安くならないのは、急峻な地形や高い人件費のためだ。著者によると、これは真っ赤な嘘。

樹種や寸法、加工度、季節、景気による変動はあるものの、同じ条件で丸太価格を比較したとき、外材の価格の方が日本のスギ材より高い。しかし、ホームセンターなどで外材と国産材の板を比較したら、外材の方が安く感じてしまう。では、なぜ山元の丸太価格では外材より安い国産材が、消費者の手に届く商品となると、外材より高くなるのだろうか。これは、立木や丸太、製材品そのものの値段ではなく、加工され流通する過程に問題があるから。空気売り問題や偽装産地問題、不合理なビジネスなど、日本の木材業界は悪しき慣例が蝕んでいた。(内容は本で確認してください)

戦後、和室から洋室の家の需要が高まるにつれて、肌目の綺麗さより、均質で組み合わせしやすい材料、集成材、合板材の需要が高まり、大径木で高品質、種類も量も消費者の要望に合わせた木材の需要が高まった。一方、国産材は、消費者に「木の特徴を知らない」と文句を言いつつ、補助金頼りの傲慢な商売を続けていた。時流の移り変わりと世の中のニーズの変化に対応できなかった林業界と国産木材業界に責任がある、と著者は指摘している。

現在は、商品の情報開示や販売の安定性、迅速な流通など、他の製造業界では当然のことに取り組み、日本の林業でも設けることができる企業も増えている。

 

その他、ガイドラインや再造林を目指す長期伐採権制度など、日本林業の将来に関する取り組みや提言も含まれています。

ちなみに、以前簡単に紹介しましたが、カナダ(特にブリティッシュコロンビア)は持続可能な森林経営に積極的で、森林認証制度で世界をリードしています。またいつか、森林認証制度に関してもまとめたいと思います。

興味がある方はぜひ読んでみてください。

 

本紹介(兼自分用メモ):イシューからはじめよ(安宅和人著)

 

最近、安宅先生の「イシューからはじめよ」という本を読みました。

ロジカルシンキング・問題解決のツール本で、以前にも読んだことがあり、研究活動にも応用可能な点が多く、久々に読んだらやっぱり面白かったので、記事にしました。2010年と約10年前に発売された本で、尚且つ有名なベストセラー本で、今更紹介するのもなんですが、自分のためのメモとして、内容をまとめます。

 

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2010/11/24 安宅和人 (著)

 

著者は、解決すべきイシューを「バリューのある仕事」と呼び、イシュー度(自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ)と解の質(そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い)の両者を兼ね備えたものであるべき、と述べられています。

あらゆる問題・課題解決に向けて、ただ闇雲に努力するのではなく、本当に解決するべき「バリューのある仕事」を見抜き(1章)、仮説を立て(2、3章)、分析・アウトプットし(4章)、相手に重要なメッセージを伝える(5章)、というサイクルを素早く回すことで、圧倒的生産性を得る。そのためのロジカルシンキング・問題解決ツールを各章に分けて紹介しています。

 

1章 イシュードリブン:

イシューを見極める:問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを見極めること。

本著の重要な部分であり、この力を高めることが、最も重要になります。

 

1)仮説を立てる

・「スタンスをとる」こと:出来る限り具体的に、詳細に

・「言葉」にする:イシューと仮説は紙や電子ファイルに言葉として表現する。言葉にするときに詰まる部分こそイシューとしても詰まっていない部分であり、仮説を持たずに作業を進めようとしている部分。(言葉で表現するときのポイント:主語と動詞をいれる。比較表現を入れる。)

 

2)良いイシューの条件に注意

・本質的な選択肢である

・深い仮説がある:深い仮説を持つための定石

  ・常識を否定する

  ・「新しい構造」で説明する:共通性、関係性、グルーピング、ルールの発見

・答えを出せる

 

3)イシュー特定のための情報収集

考えるための材料を入手する:時間をかけすぎずに大枠の情報を集め、対象の実態についての肌感覚を持つ

(コツ)

・一次情報に触れる:そのテーマを研究している人、手法を開発した人の話を聞く。

・基本情報をスキャンする:数字、問題意識、フレームワーク

・集めすぎない・知りすぎない

 

4)イシュー特定の5つのアプローチ

・変数を削る:いくつかの要素を固定し、考えるべき変数を削り、見極めのポイントを整理

・視覚化する:問題の構造を視覚化・図示化し、答えを出すべきポイントを整理

・最終形から辿る:すべての課題が解決した時を想定、現在見える姿からギャップを整理

・「So what?」を繰り返す:仮説を深める

・極端な事例を考える:極端な事例をいくつか考えることで鍵となるイシューを探る

 

2章 仮説ドリブン①:

イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる。解の質を高め、生産性を大きく向上させる作業が、「ストーリーライン」作りとそれに基づく「絵コンテ」作り。→この二つを合わせて「イシュー分析」

 

・イシューを分解する:

 意味のある分解とは:MECE(ダブりもモレもなく、という概念)

・ストーリーラインを組み立てる

 Whyの並び立て:

 「空・雨・傘」構造

 

3章 仮説ドリブン②:

ストーリーを「絵コンテ」にする。大胆に思い切って描くことが大事。どんな分析結果が欲しいのか。

 

・軸を整理する
 分析的な考え方:変化・構成・比較

・イメージを具体化する

・方法を明示する

 

4章 アウトプットドリブン:

実際の分析を進める

 

5章 メッセージドリブン:

伝えたいものをまとめる。

本質的・シンプルを実現する。ストーリーラインを磨き込む

  • 論理構造を確認する
  • 流れを磨く
  • エレベーターテストに備える

チャートを磨き込む

  • 1チャート・1メッセージの徹底
  • タテとヨコの比較軸をみがく
  • メッセージと分析表現を揃える

 

 

以上、自分のためのメモみたいなものなので、わかりづらいかと思いますが、まとめました。4章や5章もわかりやすい図表が具体的な例を添えて説明されていますので、見てみてください。

ビジネスマンや研究者以外の方も、様々な場面で使える考え方だと思いますので、是非読んでみてください。