エネルギー問題の今を知る IEAの『World Energy Outlook』
先日、小泉環境相が演説を行いましたが、
スペインで第25回国連気候変動枠組条約締約国会議
いわゆる、COP25が開催されていますね。
国連のグレーテス事務総長は、
石炭への依存を低減するよう、世界に呼びかけました。
世界の動向に反し、
石炭火力発電を進める日本にとって
耳の痛い話ですね。
そんな世界のエネルギー問題の今を知るために、
IEAのWorld Energy Outlookを紹介したいと思います。
まず、IEAとは?
IEA(International Energy Agency)は和訳すると
『国際エネルギー機関』で、
OECD加盟国(+協力国数か国)が参加し、
- エネルギー安全保障の確保(Energy Security)
- 経済成長(Economic Development)
- 環境保護(Environmental Awareness)
- 世界的なエンゲージメント(Engagement Worldwide)
の「4つのE」を目標に掲げ、
エネルギー政策全般に取り組む組織。
もともとはオイルショックの際に、
安定したエネルギー需給構造を
確立することを目的に設立されました。
石油、石炭、天然ガスなどの化石資源に加え、
バイオマスや風力、太陽光などの再生可能資源に関する、
様々な統計データや、レポート
さらにエネルギー政策に関する提言がなされています。
ちなみに各部門ごとにタスクという小部門が存在し、
例えばIEA Bioenergyでは
- Task 32(バイオマスの燃焼、混焼)
- Task 33(バイオマス及び廃棄物のガス化)
- Task 34(直接熱化学液化)
- Task 37(バイオガス)
など、10以上に細分化され、
Task毎に各国の代表者や専門家が存在し、
年に数回レポートがまとめられています。
そのIEAが毎年発表する年次報告書が
『World Energy Outlook』です。
本文自体は有料でかなりボリューミーなので、
『Exective summary』をおススメします。
(無料で読めますよ!)
エネルギー問題に関心がある学生なら、
英語の勉強にもいいんではないでしょうか。
ちなみに、今年のExective summaryを簡単にまとめると、
三つのシナリオを検討
1)現行政策シナリオ(Current Policies Scenario)
現状の政策で進んだ場合のシナリオ
2040年まで毎年1.3%ずつエネルギー需要が拡大し続ける
2)公表政策シナリオ(Stated Policies Scenario)
現在世界で公表されている政策をもとに作成した現実的に達成可能なシナリオ
2040年まで毎年1%ずつエネルギー需要が拡大し続ける
3)持続可能な開発シナリオ(Sustainable Development Scenario)
パリ協定で定められた目標の達成に向けたシナリオ
再生可能エネルギーの最大限の利用が不可欠であり、
あらゆる部門のエネルギーシステムを急速かつ幅広く変容する必要がある
主な内容としては、
エネルギー安全保障:
シェールガスの開発に伴うUSでの採掘量の増加が、OPECやロシアの石油生産量の低下に影響。しかし、いずれのシナリオでも2040年においても中東の石油資源に依存すると予測。
電力:
再生可能エネルギーの低コスト化やデジタル技術の進化が、エネルギー移行の機会を創出するが、同時に新たなエネルギー安全保障問題も生じると予測。
アフリカ諸国への注目:
アフリカのエネルギー消費が急増しており、2040年までに五億人以上の人口増加が予想され、今後もアフリカの役割が重要となる。
エネルギー効率:
エネルギー効率の向上が落ち着いてきている。一次エネルギーを最大限利用することが重要な課題であり、持続可能な開発シナリオの達成には不可欠。
エネルギー源の選択:
アジア経済の急速な発展に必要な熱、電気のエネルギー源として、石炭、天然ガス、再生可能エネルギーが用いられるが、その割合が重要となる。如何に石炭の割合を軽減できるか。
公表政策シナリオでは、石油需要の増大は、2025年以降急速に低下し、2030年には一定に落ち着くと予想される。
電力の需要増大:
エネルギー需要の増大以上に、電力の需要拡大がより速い。
公表政策シナリオでは2040年には、太陽光発電が最大になる。
オフショア風力発電の拡大:
コストの低下及びヨーロッパで実証試験で得られた経験がオフショア風力発電の導入を加速する。
簡単にまとめようと思っても、意外と長くなりますね。
他にも色々なことが書いてあるので、興味ある方は是非。
東日本大震災の前は、
火力、水力、原子力、再エネのエネルギーミックスを主軸に置いていた
日本ですが、現状はそれぞれに大きな課題を抱えています。
日本のエネルギーの未来について、
考えるいいきっかけになるのではないでしょうか。