カナダ在住研究者のつぶやき

バンクーバー在住の研究者が、個人的に関心の高いエネルギー・環境問題や、趣味のトレイル・食べ歩き・酒についてつぶやく予定

2021年はBC州におけるOld-growth trees伐採のターニングポイントになる!?

 

CBCで森林に関する「興味深いニュース」があったので、共有します。

絶滅の危機に瀕しているエコシステム(生態系)と林業が共存するために、変化が不可欠だと専門家が喚起している記事。

 

なお、本文に入る前に、本記事のキーワードであるOld growth treesを「原生林」と訳していますが、後述のOGSRレポートによる定義だと、一般的には優先樹種の樹齢(海岸沿いで250歳、内陸部で140歳)や、時には物理的特性や生態学的機能に基づいているが、単一の明確な定義はない。BC州のAn Old Growth Strategy for BCによると、「Old-growth treesは、老若樹とそれに関連する植物、動物及び生態学的に繋がるものであり、人間活動の影響を受けていない森林」とされています。従って、高齢樹林より原生林の方が適しているかと思い、訳しています。

 

 

〜以下記事の一部翻訳〜

Kwakiutl(クワキウトル)先住民のKnox David Mungo氏にとって、Vancouver島の北東海岸沖の森林と海は神聖なものである。彼は、先住民コミュニティのために魚を集め、曽祖父のトーテムポールを復元してきた。

「現在、活発な伐採が行われており、十分育った樹木が伐採され、大量の廃棄物が残されている。山腹の道路に放置すると、土壌の浸食を起こし、サケが生息する川に地滑りを誘発している。」

 

Vancouverを拠点とする大手製材会社であるWestern Forest Productsは、Knox氏の領地内のいくつかの地域で樹木を伐採しており、事業の環境への影響を最小限に抑えるための方針を定めている。

BC州の原生林が伐採されないようにするため伐採道路を封鎖している、バンクーバー島の南海岸沿いの保護活動家は、生物多様性を保護するために州からの更なる取り組みを望んでいる。生計を林業に依存しているコミュニティも、彼らが知っているように、新しいルールが人生を終わらせないという保証を望んでいる。

 

2020年9月、BC州政府が「A New Future for Old Forests」というタイトルのOld Growth Strategic Review (OGSR)をリリースした。州が森林管理政策を変更して、絶滅の危機に瀕している古代からの生態系をより上手く保護し、持続可能な長期的な林業を支援することを目的とした、野心的な一連の推奨事項が示されている。

 

OGSRが提案する最初のステップは、先住民をより意味のある方法で意思決定プロセスに参加させることにより、先住民と政府間の関係を確立することである。

これは、クワキウトル族の首長であるRoss Hunt氏が何年も望んでいたことである。彼は、州が先住民コミュニティを更に受け入れるまで、先住民にとって文化的な重要性と経済的価値のある原生林の伐採を停止することを望んでいる。Hunt氏によると、数千万ドルの丸太が彼らの伝統的な領土からトラックで運ばれ、そこに住む先住民の人々にはほとんど全く利益がないのを見てきた、と主張している。

 

OGSRの共同著者の1人であり、Tahltan族のメンバーであるGarry Merkel氏は、森林管理者であるAl Gorley氏と一緒に作成したレポートに大きな期待を寄せている。しかし、その14の推奨事項を迅速または簡単に達成することはできないことを認めている。「私たちは別のタイプの管理スタイルに移行する必要があります。生物多様性リスクの管理と、より大規模な生態系の健全性の維持に焦点を当てたものです。」と述べている。

 

報告書は、重要な原生林のある地域への伐採を延期するために直ちに行動を起こすよう求めた。Sierra Club BCによると、BC州の海岸沿いと内陸部で、毎年140,000 haの原生林(樹齢120年以上の木がある森林)が伐採されていると推定している。

 

BC州が昨年9月にOGSRをリリースしたとき、353,000ヘクタールの森林の保護を発表した。Merkel氏は、政府がさらに前進することを望んでいると述べた。

 

 

Vancouver島のPort McNeill市長であるGaby Wickstrom氏は、OGSRが原生林の伐採の全面禁止を求めていないことは安心だと述べた。これは彼女の地域の主要な経済的推進力の1つであると彼女は言う。切り株から生み出された収入は、社会プログラム、学校、病院のような医療サービスに支払われると彼女は言った。Gaby Wickstrom氏は業界の変化に反対していないが、彼らが自分のコミュニティに困難をもたらさないようにしたいと考えている。

 

Gaby Wickstrom氏は、Truck Loggers協会の事務局長であるBob Brash氏とともに、森林管理体制の変化が労働者とその家族にどのように影響するかについて十分な注意が払われていないことを懸念している。

 

Brash氏によると、BC州の伐採業者はすでに厳しい規制に直面しており、競争力に影響を及ぼしているという。「私たちの多くは、私たちが厳しく規制されており、私たちが扱う規則はかなり面倒で強烈だと今言っているでしょう」とBrush氏は述べている。

 

BC州が国際的な木材輸出国として競争力を維持するためには、政府は2021年に原生林の伐採に関する新しい政策を、あまり早くは実施すべきではないとBrash氏は述べた。

「BC州の森林部門への投資環境は良くありません。土地基盤には不確実性があります。」

 

Brash氏とWickstrom氏はどちらも、伐採業界が過去100年間に何度も自らを改革しなければならなかったことに同意している。しかし、適切な調整があれば、州の主要な経済的推進力であった伐採産業は引き続き力強いと彼らは信じている。

 

森林部門は、BC州の総輸出の4分の1以上を占めています。2019年には119億ドルをもたらし、50,000人以上のBC州民を雇用している。

Wickstrom氏によると、2018年には、彼女の地域で伐採された木材に対して、6000万ドルの切り株料金が州に支払われたという。

 

 

冒頭のDavid Mungo氏は、2021年が、BC州の林業の未来のターニングポイントを示すために、すべての利害関係者がより有意義な方法で集まる年になることを望んでいる。

 

 

以前の記事(カナダ・BC州の森林・樹木に関する興味深い5つのこと)でも紹介した通り、BC州は森林が重要な産業の一つです。

同時に、先住民との繋がりを重視し、先住民の権利を配慮した政策を積極的に取り組んでいます。記事の途中で引用したA new future for old forestsのOGSRも、高齢の樹木の定義、賦存量、それらの価値、経済的利益、生物多様性への影響、カーボンバランスと気候変動への影響、森林保護の歴史や、先住民との歴史など、幅広い観点から全72ページに渡って纏められており、大変興味深い内容で勉強になります。

 

カナダ、特にBC州は、持続可能な森林管理・経営に積極的に取り組んでおり、世界をリードしています。この問題に対し、BC州、カナダ政府、森林部門の方、先住民の方々がどのように取り組み、協働して、どのような解決策を導き出すのか、要注目ですね。

 

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