カナダ在住研究者のつぶやき

バンクーバー在住の研究者が、個人的に関心の高いエネルギー・環境問題や、趣味のトレイル・食べ歩き・酒についてつぶやく予定

【気候変動】科学者からの警告 論文紹介

気候変動問題に関するカナダ人の意識の高さ

については、先日記事にしました。

 

何かと話題の気候変動問題、

本当に起こっていると思いますか?

 

最近毎年のように異常気象が続いている・・・

海水面も上昇して太平洋の小さな島国は無くなるらしい・・・

山火事が頻発していて大変・・・

でも北極の気温は低下しているらしい・・・

 

漠然と問題だな、と思っている方が多数だと思います。

特に異常気象は身を以て体感している方も多いかと思います

 

 

それでは、もう一つ質問です。

この気候変動問題、人為的なものだと思いますか。

 

産業革命以降、便利な生活を求めて、

大量生産・大量消費の経済システムとなり、

大量の化石資源の利用や、

地球環境の破壊など、

自然や生態系への配慮が欠如していたかも?

と心当たりがある人も多いかと思います。

 

一方で、地球にはある一定のサイクルで

温暖期と寒冷期があり、

現在の気候変動など、微々たるもので、

人間活動による気候変動問題は

一部の国や企業、団体による創造だ、

と主張する人も一部いるため、

(しかもまるで懐疑論の研究者が多いかのような表現で)

懐疑派の方もいらっしゃるかと思います。

 

私は今あるデータ、現実から

今地球で起こっている事実を

理解することが重要ではないか

と思います。

 

 

先月、”BioScience”というJournalに

World Scientists’ Warning of a Climate Emergency 

というViewpointが投稿されました。

 

オレゴン州立大学の

William J. Ripple博士とChristopher Wolf博士 

が筆頭著者で、153の国から11,258名の科学者

が同論文に賛同しています。

 

具体的な内容は最後に和訳・要約したので、

興味ある方は読んでみてください。

 

個人的には、内容に賛同しています。

一方で、大量生産大量消費に慣れ切った生活を

急激に切り替えるのは無理だと思うし、

(国が絶対的な権力を握っている国家なら別ですが)

一人一人が地球民としてこの不可逆的な難題を認識し、

持続可能な社会の創製に向けて、

少しずつでも変容できる様に考えられる

そんな社会になってほしいですね。

 

 

以下、論文の内容:

(興味のある方はどうぞ)

 

1979年のFirst World Climate Conference以来、

Rio Summit (1992), the Kyoto Protocol (1997), the Paris Agreement (2015)

を含め40年間、気候変動について議論されてきた。

しかし現状、二酸化炭素排出量は依然増加の一途を辿っている。

 

この40年間で、深刻な気候変動に関与している人間活動は、

人口や反芻動物数、肉生産量、GDP、森林被覆率の低下、

エネルギー消費量、航空機の使用量が挙げられる。

太陽光発電や風力発電による再生可能エネルギー消費量は、

過去10年で373%増加したものの、

2018年データによると、ガス、石炭、石油等の

化石燃料消費量の方が依然28倍も大きい結果であった。

2018年現在、二酸化炭素排出量の約14.0%に炭素価格が設定されているが、

二酸化炭素排出量1tの加重平均価格は約15.25ドルに留まっており、

より高い価格設定が必要になる。

 

また、温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素)

の大気中濃度が急激に増加しており、

地表面の気温も40年で大きく増加している。

 

さらに、北極海の氷、グリーンランドや南極の氷床、

氷河の厚さの減少に加え、海洋の温度上昇、

酸性化、生物多様性への影響も観測されている。

 

この40年間、経済活動を続けてきた結果、

気候変動は多くの科学者が予想していたよりも

急速に進行しており、生態系や人間の未来を脅かしている。

 

持続可能な未来を確立するため、

我々は生き方を変える必要がある。

経済発展や人口増加は二酸化炭素の排出の大きな要因であり、

劇的は変容が求められる。

そこで、6つの重要なステップを提案する。

 

 

1.エネルギー

迅速に大規模なエネルギー保全と省エネの実践し、

化石燃料から人類と環境に安全な再生可能エネルギーへの転換が必要である。

化石燃料利用については、炭素回収・貯蔵(CCS)等の技術を研究し、

埋蔵資源の発掘を停止すべき。

先進国は、発展途上国のエネルギー転換を支援するべきである。

また、化石燃料への補助金の廃止や炭素価格の引き上げを提案。

 

 

2.短寿命大気汚染物質

大気汚染物質の中で、メタン、黒色炭素、

ハイドロフルオロカーボン(HFC)、

対流圏オゾン等の短寿命大気汚染物質の削減が必要。

二酸化炭素等の長寿命大気汚染物質に比べ、

大気中での滞留時間が短く、

気候変動への悪影響が大きい。

同物質の排出量削減は、短期的な気温上昇トレンドを

50%以上も留める効果が期待でき、

何百万もの生命の保護や、収穫の増加に繋がる。

 

 

3.自然

植物プランクトン、サンゴ礁、森林、サバンナ、草原、

湿地、泥炭地、土壌、マングローブ、海草等は、

大気中の二酸化炭素の吸収に重要な役割を

果たしているため、生態系の保護が必要。

生物多様性の損失へ迅速な対応を行うことで、

パリ協定で目標とされる2030年までの排出量削減の

3分の1を達成できる。

 

 

4.食品

温室効果ガスの削減には、動物由来(特に反芻動物)

のたんぱく質から、植物由来の食品たんぱく質の

食生活へ転換していくことが必要。

さらに、植物由来のたんぱく質の割合の増加により、

畜産用の牧草地が植物の栽培に向けた耕作地に転換されていく。

また、食品廃棄物の大幅削減に向け、

耕す土地を最小限に留める最小耕起等が極めて重要になる。

 

 

5.経済

生物圏の長期的な持続可能性を維持するため、

GDP成長や豊かさの追及から、

生態系の維持や幸福の追及への移行が必要。

経済成長に起因する原料の過剰抽出や、

生態系を脅かす過剰開発を削減すべき。

 

 

6.人口

毎日20万人以上、年間約8,000万人増加しているが、

社会的な整合性を取りながら、世界人口の安定化が必要。

家族計画を全ての国民に適用し、出生率を低下させ、

人口増加や生物多様性の損失を軽減させるべき。

 

 

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