カナダ在住研究者のつぶやき

バンクーバー在住の研究者が、個人的に関心の高いエネルギー・環境問題や、趣味のトレイル・食べ歩き・酒についてつぶやく予定

二酸化炭素の9つの新たな利用法

 

先日、大気中の二酸化炭素の吸収、回収に関する研究を紹介しました。

その続きで、二酸化炭素の新たな利用法に関する記事を

最近見つけたので、シェアしたいと思います。

 

 

 

記事のタイトルは9 Hot New CO2 Applicationsです。

 

増えつつある二酸化炭素のマーケット

 

二酸化炭素のマーケットは年約3%のペースで上昇している。

現在、商業部門の70%が飲料・食料品として利用されている。

加えて、EOR(石油増進回収法)にも用いられる。

更に、産業部門における二酸化炭素の利用に関して、

概念的なアイデアは更に存在している。

 

長期的な視野から見ると、二酸化炭素の排出量削減への世界的関心の向上、

気候変動問題や地球温暖化に対する懸念から、ますます多くの利用法が

開発されつつある。そしてその多くは、学術的には研究されてきたが、

スケールアップや商業化にはいたっていない。

 

具体的な利用法

様々なプラスチックや建築用材の原料としての利用が提案されている。

例えば、プラスチック生産の炭水化物の代替品として利用するアイデアで、

完全なグリーンテクノロジーである。

 

究極的な目標は、大気中の二酸化炭素を吸収・回収し、有効利用することだが

依然の記事で示した通り、研究が進められている。

 

それでは以下に9つの新たな技術を示す。

 

1.溶融電解によるカーボンナノチューブ

電力を用いて二酸化炭素をカーボンファイバーやナノチューブに変換する技術。

炭素複合材料に用いることが可能で、軽量で金属の代替品として期待。

利用例として、自転車や航空機、タービンの羽が挙げられる。

大学の研究者による『C2CNT』という名でスタートアップしている。

 

2.コンクリートへの添加

コンクリートへの添加は二酸化炭素を地上から隔離出来るだけでなく、

コンクリート中の炭酸カルシウムの濃度を高めることで、

コンクリートの強度にも寄与する。比較的新しい手法。

 

3.バイオプラスチック

塗料やコンクリートなどの建築材料やプラスチックに用いるナノ粒子への

応用が注目されている。大学で主に研究されて来たが、現在商業化に向けて動いている。

石油石炭の燃焼で生じる廃棄物(例えばフライアッシュ)などを

混合することも検討されている。

 

4.燃焼排ガス由来の二酸化炭素を用いたプラスチック

燃焼排ガスから得られる二酸化炭素を原料としたバイオプラスチック生成の

技術がカリフォルニアのNewlight Technologiesで開発されている。

 

5.メタノール

人工光合成により二酸化炭素をメタノールに変換する研究が進められている。

メタノールは一般的な溶媒であり、産業用の化合物、燃料などとして用いられる。

現在、インドのBreathe社で本プロセスが開発されている。

 

6.プラスチック発泡複合体

回収した二酸化炭素を、エチレングリコールやメタノール、

発泡プラスチックに変換する研究が進められている。

おがくずや木、籾殻といった天然物質が基本骨格となる。

中国のC4Xで本プロセスが開発されている。 

 

7.強化地熱システム(Enhanced gerthermal systems)

二酸化炭素を超臨界状態(高温高圧状態)にすることで、

循環熱交換流体として用いることができる。

温度による二酸化炭素の密度の変化を利用することで、ポンプの代わりとして利用。

コンパクトターボに応用できる。

 

8.高分子

亜鉛ベースの触媒を用いることで、二酸化炭素をポリカーボネートに

変換することで、高分子物質の原料として用いることができる。

 

9.排ガス由来の二酸化炭素からの燃料・化学物質変換

再生可能電気を用い、二酸化炭素を一酸化炭素に変換するプロセスが開発されている。

一酸化炭素はあらゆる産業で重要な物質であり、酸素のみが副生物として生成。

 

 

さいごに

二酸化炭素の排出量削減に向けて世界中で取り組んでいますが、

そもそも二酸化炭素の回収ならびに高付加価値化が達成できれば、 

気候変動問題への取り組み方自体が大きく変わる可能性があります。

今後いかに経済性を高めるかが課題となるかと思いますが、

大いに期待ですね。

 

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